『ビブリア古書堂の事件手帖』三島有紀子監督×黒木華 インタビュー

インタビュー

日本中の文芸ファンから熱い支持を受け、累計680万部突破した大ベストセラーシリーズ『ビブリア古書堂の事件手帖』。過去と現代の想いが交差し、秘密が解き明かされていく本作の魅力について篠川栞子を演じた黒木華さんと三島有紀子監督にお聞きしました。

『ビブリア古書堂の事件手帖』あらすじ
鎌倉の片隅にひそやかに佇む古書店「ビブリア古書堂」。店主の篠川栞子は極度の人見知りだが、ひとたび本を手にすると、その可憐な唇からとめどなく知識が溢れ出す。さらに彼女の優れた洞察力と推理力で、五浦大輔が持ちこんだ夏目漱石の「それから」に記されたサインの真偽を解き明かし、彼の祖母・絹子が死ぬまで守った秘密が隠されていると指摘する。これが縁となり古書店で働き始めた大輔は、日に日に栞子に惹かれていく。そんな中、謎の人物が栞子が大切に保管する太宰治の「晩年」を奪おうとしていた……

黒木さん自身が、まさに栞子さんでした(三島)

−−篠川栞子さんを演じる際に、黒木さんへ監督からどのようなご指示があったんでしょうか。また、監督が黒木さんをキャスティングした理由について教えて下さい。

黒木華(以下、黒木) 本に対する感情と人に対する感情の表現の違いについて、メリハリをつけて欲しいというご指示をいただいて。栞子さんが、大好きな本から謎を紐解く際の演じ分けも意識しました。

三島有紀子(以下、三島) 栞子さんは、本に関わることには突然興奮体質になる人物で。はたと自分が興奮体質に入っていたことに気づくという表現を丁寧にやりたいと思ったんです。キャスティングに際しては、本を持つ姿を非常に美しく撮ることに加えて、日本語で音読する際に声が耳に届いて内容が入り、心地よい方は誰かと考えた時に黒木さんしか浮かびませんでした。現場で、黒木さん自身の髪を触る癖も栞子さんにつながる癖なので取り入れて。黒木さん自身がまさに栞子さんという感じで現場にいてくださいました。

−−「ビブリア古書堂」が実在しているというセットだったんですが、配置などこだわった点や実際の古書店を参考にされた点などありましたか。

三島 私自身、古書店巡りが好きなので神保町など古書店にもよく行くんです。その際、知った配置の傾向などを参考にさせていただきました。ある作家の次にはこの作家が来るかなど。

黒木 栞子は働いている側なので、演じる前に古書店協会の方から古本を扱う際の所作を教えていただきました。私も古書店巡りが好きなので、こういうお店があったらいいなと思うほど、素敵な美術セットでした。

三島 あってほしいですよね!映画のコーナーも充実していて、本当は全部アップで撮りたかったんですけど……。

−−映っていない本棚も含めて、秩序に沿って並んでいるんですか?

三島 そうです。栞子さんがどういう秩序や配置で並べるかを考えながら並べています。新刊を表に出して文庫本などをワゴンに入れるなど商売としてのこだわりもありつつ趣味嗜好も含めて。私の好きな本や黒木さんが好きな本も並べてました(笑)

黒木 画面には映ってないのですが、写真集のコーナーもあって。本当に素敵でした。

−−黒木さんは、出来上がった作品を観ていかがでしたか。

黒木 まるで一冊の本を読んでいるようでした。光の加減など質感まで感じられて。東出昌大さん演じる田中嘉雄と夏帆さん演じる五浦絹子が本当にその時代を生きているようで……。「晩年」という本を通して過去と現在が繋がっていることにすごく感動しました。

古書には誰かの物語が引き継がれている気がします(黒木)

−−三島監督が本作で過去と現代の繋ぎで意識されたことを教えて下さい。

三島 大輔と栞子さんの「純粋で甘い距離感」と嘉雄さんと絹子さんという「大人のラブストーリー」の2組がリンクするという編集は意識的にやりました。過去と現在でいうと、過去の人の強い想いがいかに現代に絡まっていくか……。本作で一番やりたかったことは、1人の強い想いというのは、その人が亡くなった後でも1冊の本などの物に託されて誰かにきちんと伝わる、その結果誰かの行動や人生を変えることがあるということでした。なので、過去が現代にどのように影響を与えていくのかをパズルを組み立てるように観せ、最後のシーンに繋げていく……。最後に至るシーンは、アクションではなく、そう言った想いをじわじわと伝わるように制作しましたので注目して観ていただきたいです。

−−本作を観る方へメッセージをお願いします。

黒木 古書自体に誰かの物語が引き継がれている気がするんです……。本作も、過去と現代の想いがうねって物語になっていて。演出も美しいですし、古書を通じて起こる謎解きの面白さと登場人物たちの想いを感じていただけたらなと思います。

三島 キャストのみなさんが、これまで出られた作品とは違う表情を見せてくださっているのでそこが見所かなと思います。また、人と人、人と本、場所と場所、想いと想いが〝つながる〟というのはどういうことかを見つめていました。自分にとっての〝つながる〟が散りばめられています。本を渡す手と手、本を触る指、切通しや橋、想いを受けとった時の表情などです。いろんなものが繋がった瞬間を見届けていただけたらと思います。

◯PROFILE
黒木華(くろき はる)
1990年3月14日生まれ、大阪府出身。2010年NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」のヒロインオーディションに合格し、デビュー。2014年には『小さいおうち』で第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を日本人最年少で受賞。同作と『母と暮せば』(15)にて、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を2年連続受賞。実力派女優として高い評価を得ている。今年の公開作に、『未来のミライ』、『散り椿』、『日日是好日』(18)、『億男』(10月19日)、『来る』(12月7日公開)がある。現在放送中のNHK大河ドラマ「西郷どん」、日本テレビ系「獣になれない私たち」に出演中。
三島有紀子(みしま ゆきこ)
大阪市出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後NHKに入局。「NHKスペシャル」「トップランナー」など市井の人々を追う人間ドキュメンタリーを数多く企画・監督。03年に劇映画を撮るために独立しフリーの助監督として活動後、『しあわせのパン』(12)、『ぶどうのなみだ』(14)と、オリジナル脚本・監督で作品を発表。撮影後、同名小説を上梓した。企画から10年かけた『繕い裁つ人』(15)は、第16回全州国際映画祭で上映され、韓国、台湾でも公開。その後、『少女』(16)を手掛け、『幼な子われらに生まれ』(17)は第41回モントリオール世界映画祭で最高賞に次ぐ審査員特別大賞に加え、第41回山路ふみ子賞作品賞、第42回報知映画賞では監督賞を受賞し、好評を博した。ドラマでは、桜木紫乃原作の『硝子の葦』(WOWOW)を監督。

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© 2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会

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(文・大山峯正 写真・金山寛毅)