ツイッターから誕生した、いま最も泣ける四コマが原作の実写化作品『殺さない彼と死なない彼女』。四コマ原作の世界観やテンポ感を活かしつつ、様々な登場人物の心情を描写した誰もが共感できる魅力的な長編作品となっている。本作で小坂れいを演じた間宮祥太朗さん、鹿野ななを演じた桜井日奈子さんに本作の制作秘話や魅力についてお聞きしました。
『殺さない彼と死なない彼女』あらすじ
何にも興味が持てず、退屈な学生生活を送っている高校三年の小坂れい(間宮祥太朗)。ある日、小坂は教室で殺されたハチの死骸を埋めているクラスメイト・鹿野なな(桜井日奈子)に出会う。 虫の命は大切に扱うくせに「死にたい」が口癖の鹿野に興味を抱く小坂。それまでネガティブな言動で周囲から変わり者扱いされていた鹿野だったが、口の悪い小坂と本音で話すうちに、ふたりは一緒にいることがあたりまえになって……。
原作を読んで、脚本を読んでまたボロ泣きしました(桜井)
—原作を読まれて、また実写化のお話が来た時はいかがでしたか。
間宮祥太朗(以下、間宮) ツイッター発の四コマ漫画だったので、今の時代の作品だなと。痛々しいものを優しい作画と雰囲気で表現されている作品でもあるので、どんな風に実写化されるのかと読みながら考えていました。
桜井日奈子(以下、桜井) 泣ける四コマと分かっていたんですが、それでも原作読んでボロ泣きしました。その後、脚本を読んでボロ泣きして……。読み終わった後、色んな感情の余韻に浸りたいと思えたので、実写でもそれが出せればいいなと思いました。
—脚本を読まれて、また原作と実写の違いをどのように意識されましたか。
間宮 脚本を読んで、すごく繋げ方がきれいでしたし、セリフも喋りやすいと感じました。原作を読んだ時にも感じていたんですが、やりとりが自然なので難しく考えず役に向き合い、演じました。
桜井 ななは全然関係ない事を言い出す子だから、最初は掴めない部分がありました。原作を読んで、リハを重ねる中で彼女の心情を理解できるようになって。原作が四コマということもあるんですが、実写でもテンポがよく、そこを大事にしました。肉まんを食べたり、花火をしたりという何気ない日常からくる愛おしさが映像でも同じく感じられたので、その中でななを演じられて嬉しかったです。
—役はご自身に近く感じられましたか。それとも遠く感じましたか。
桜井 どちらかというと近かったです。寂しがり屋な所とかわかるな……と思いながら演じていました。
間宮 割と近かったです。セリフも言いやすかったです。
—間宮さんは「死ね」というセリフが何度もありましたが(笑)。
間宮 言いやすかったです(笑)。
—小坂は好きな人に「ブス」と言ったりしますが、演じる際どう思われましたか。
間宮 口が悪い人ってかわいい人にも普通にブスっていうんですよ(笑)。その言葉自体に意味があるわけじゃないと思うので。言葉の裏替えしというよりあいさつみたいな。「お~ブス!」みたいな(笑)。そのくらい自然に悪態が口から出てくる人物ということに対して、納得いく部分があったので演じにくさはなかったです。
—鹿野はそれに対してどう感じているんでしょうか。
桜井 私は、小坂が本当にそう思っていない、不器用なコミュニケーションだと鹿野もわかって、真に受けていないと思うんです。「ブス?美女だって(笑)。」という心情を意識しました(笑)。
—お寺や校庭などでななが走るシーンが面白かったんですが、やってる桜井さんとそれを見ている間宮さんはいかがでしたか。
桜井 真面目に走っているけど、滑稽に見えることを考えながら走りました(笑)。肘から下だけ動かして走ってみたり、いろいろやってみたんです。そこで鹿野っぽさが出せたらいいなと思って演じました。
間宮 そこの関しては、監督と見方あまり変わらなくて。「さっきのカットの鹿野面白かったね(笑)。」みたいな話を監督としながら見ていました。校庭のシーンでは、校門は飛び越える話じゃなかったよね?たまたま閉まっていたんだよね?
桜井 そうなんですよ(笑)。
間宮 走っているのを背中で見ていただけなので。「そう行くんだ~(笑)。」って見ていました(笑)。
孤独を自分のものにしてる人に、一番刺さる作品だと思います(間宮)
—様々な登場人物の中で、誰に一番共感しましたか。
桜井 共感は鹿野が一番しました。あと、同じ女子としては撫子がすごく魅力的に感じて。「好きっていっただけで付き合ってとは言っていないのよ。」の部分は面白かったし。とにかくストレートに自分の気持ちを言えちゃう所が可愛かったです。
間宮 小坂ですね。似た部分が多いので(笑)。
—アドリブありましたか。
間宮 結構ありました。自然なセリフも多かったので。自然と口をついて出るような事が多かったです。神社でヘアピン投げるシーンもアドリブなんですよ。ヘアピンの後の鹿野の走りの流れはぜひ観て欲しいシーンです(笑)。
桜井 自発的に提案したのは、走り方の部分とか肉まんむしゃむしゃ食べちゃうシーンだったり……。女子過ぎないしぐさで鹿野っぽさを自然に見えるように演じるのは、監督とセッションしていく中で大切にした部分でした。
—チョコレートとバニラアイス、肉まんとあんまんはそれぞれどちらが好きですか。
間宮 バニラ。肉まん。
桜井 バニラ。肉まん。
—本作を観る方にメッセージをお願いします。
桜井 ストレートなラブストーリーでもなく、ハッピーと言われたらそうでもなくて……。切なかったり悲しかったりネガティブな要素もすごくあるけど、最後には心が暖かくなるような包み込まれた気持ちになれる作品だと思います。登場人物たちの等身大の姿に共感できる部分がたくさんあると思うので、自分や周りの人と共感しながら観てもらえると嬉しいです。
間宮 孤独を自分のものにしている人に、一番刺さる作品だと思います。これを観ると対象物がないと孤独って感じないんだなと再認識できて……。自分を孤独足らしめている何かを、補い合う尊さみたいなものを感じてもらえたらと思います。
〇profile
間宮祥太朗
1993年6月11日、神奈川県出身。中学時代に読者モデルとして芸能界入りを果たし、ドラマ「スクラップ・ティーチャー 教師再生」(08/NTV)で俳優デビュー。ドラマ「ニーチェ先生」(16)では浦井健治ととも初主演を務め、『全員死刑』(17)で映画初主演を果たす。その後も映画、ドラマ、CMと多彩なジャンルで活躍。主な映画出演作として『希望の国』(12)、『高台家の人々』(16)、『闇金ウシジマくんザ・ファイナル』(16)、『帝一の國』(17)、『お前はまだグンマを知らない』(17)、『トリガール!』(17)、『不能犯』(18)、『食べる女』(18)、『翔んで埼玉』(19)、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(19)などがある。
桜井日奈子
1997年4月2日、岡山県出身。2014年、「おかやま美少女美人コンテスト」で美少女グランプリに輝く。15年に出演したウェブムービーで「岡山の奇跡」と称され注目を浴びる。16年、舞台「それいゆ」で女優デビュー。同年「そして、誰もいなくなった」(NTV)でドラマ初出演を果たす。18年、『ママレード・ボーイ』で映画初主演を飾り、続く『ういらぶ。』でもヒロイン役に抜擢。19年、ドラマ「僕の初恋をキミに捧ぐ」(EX)、「みかづき」(NHK)、フジテレビ開局60周年特別企画「砂の器」、FOD「ヤヌスの鏡」、映画『任侠学園』など立て続けに出演。また、女優業の傍ら、NHKEテレ「沼にハマってきいてみた」(19)で初MCを務めるなど、活躍の場を広げ続けている。
11月15日(金)全国ロードショー