[レポート] 今泉力哉監督と写真家の木村和平が成田凌の魅力を語る。TAMA映画祭・成田凌特集上映レポート

邦画最新情報

現在多摩市の会場を中心に開催中の第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM。11月23日(土)はパルテノン多摩小ホールにて、「スクリーンに映える魅惑の役者 成田凌」と題し、『さよならくちびる』『愛がなんだ』の上映と、成田凌さん・今泉力哉監督・写真家の木村和平さんによるトークが行われた。

『さよならくちびる』の上映後、熱気に包まれる満員の会場の中、成田さんと今泉監督と木村さんが登壇し、トークはスタート。

【俳優、成田凌の魅力】について

第11回TAMA映画賞にて、“『愛がなんだ』『さよならくちびる』ではごく身近にいそうな自然な佇まいで役に溶け込み、『チワワちゃん』では誰もが持つ弱い部分を丁寧に演じるなど多彩な表現力で観客を魅了した。”という受賞理由で新進男優賞を受賞した成田さん。
以前からの知り合いで『愛がなんだ』でやっとご一緒できたと話す今泉監督は「テクニカルなことだけじゃなくて、危機察知能力というか、台本通りにやるとオーバーになってしまうというところを、棒読みでやってみてもいいですか?って言うんです」と、一緒に作品作りをしたからこそわかる、成田さんが持つ“感覚”について語る。
続いて、写真家・俳優になる前から知り合いだったという木村さんは「顔が好きなんです」と言い、「くずれていても画になる顔というか、存在だなって思うんです」と、表情や纏う空気から映し出される成田さんの魅力を伝えた。
今泉監督と木村さんの話を照れながら聞いていた成田さんは「僕、すぐナメられるんです…」とつぶやき、TAMA映画祭授賞式舞台裏での今泉監督のお子さんとのエピソードや、様々な現場での共演者との“距離感”のお話に。
『さよならくちびる』では「彼(シマ)の軽薄さや、かっこつけたいけどつけきれないように見える部分は、彼女たち(門脇麦さん・小松菜奈さん)が作ってくれたのかも」と、自身の持つ空気が人との距離感が、役や作品作りにも活かされていることを明かした。

【男性目線から観る(作る)恋愛映画】について

「難しいですね…」と言いながらも、あれこれ話をしていく三人。

途中、成田さんが蜷川実花監督の現場で感じた、男性目線・女性目線の違いの気付きについてエピソードを語ると、続けて今泉監督も「生活環境に同世代の女性がいたっていうのは、“勝手に(女性を)理想化しない”みたいなところがある」と話し、意外と知らなかったという、それぞれの兄弟や家族のお話に。

そして「好きな恋愛映画」の話題では、成田さんは「恋愛映画では無いんですけど…」と前置きしたあと、『ディア・ハンター』(79)の、「なんかわかる」と感じた印象に残っているワンシーンについて話し、木村さんは、ロウ・イエ監督の『パリ、ただよう花』(13)をあげ、ロウ・イエ監督の恋愛の描き方について語る一幕も。

また、恋愛観の話になると、「主観的な愛情を持っている人が苦手」と取材などでも話していた成田さん自身が、『愛がなんだ』の撮影現場ではテルコを演じる岸井ゆきのさんに、「主観的な優しさ」で接していたエピソードを明かし、会場を沸かせた。

【『愛がなんだ』の写真】について

2019年話題となった恋愛映画『愛がなんだ』は、ポスタービジュアルや劇中の場面写真も注目された。ポスターの写真は、映画の撮影初日に木村さんが撮られた一枚で、これを撮影した時に木村さんが「これがビジュアルになる」と言ってたということを今泉監督が明かすと、会場からは驚きの声があがる。

また、若葉竜也さん演じる仲原の写真も木村さんが撮影しており、劇中の写真展に展示する写真のセレクトも木村さんに相談して行われていたそう。

それに対して木村さんは、「あれはすごい苦労しましたね。仲原くんは、カメラマンとしての有名度はあまり高くないから、コンセプトが詰まったかっこいい展示にしない方がいいって考えたんです」と伝え、「彼が選びそうなすごくわかりやすい写真や、なんでこれを入れるんだろう?っていうのを敢えて選んだり」と、仲原らしい写真のセレクトにしたことを語る。

また、映画のスチールは『愛がなんだ』の現場が初めてで、写真を撮影するタイミングなど、わからなかったことがたくさんあったと話した木村さん。「初めての映画が成田くんの作品で本当に良かった」と伝え、三人の関係性が見えてくるトークは、終始リラックスしたムードのまま、あたたかく幕を閉じた。
第29回映画祭TAMA CINEMA FORUMは12月1日(日)まで、パルテノン多摩小ホール、ベルブホール、ヴィータホールにて開催中。
(photo:浅野耕平/text:矢部紗耶香)