[インタビュー]『おもいで写眞』深川麻衣×香里奈

インタビュー

今の時代にこそ必要な世代を超えた人と人との触れ合いをオリジナル脚本で描く『おもいで写眞』。本作で主人公の音更結子を演じた深川麻衣さん、結子にとってはちょっと憧れのお姉さん的存在である樫井美咲を演じた香里奈さんに本作の魅力についてお聞きしました。

『おもいで写眞』あらすじ
たった一人の家族だった祖母が亡くなり、メイクアップアーティストになる夢にも破れ、東京から富山へと帰ってきた音更結子。祖母の遺影がピンボケだったことに悔しい思いをした結子は、町役場で働く幼なじみの星野一郎から頼まれた、お年寄りの遺影写真を撮る仕事を引き受ける。初めは皆「縁起でもない」と嫌がったが、思い出の場所で写真を撮るという企画に変えると、たちまち人気を呼ぶ。ところが、あるひとの思い出が嘘だったとわかり、その後も謎に包まれた夫婦や、過去の秘密を抱えた男性からの依頼が舞い込む。怒って笑って時に涙しながら成長してゆく結子の毎日は、想像もしなかったドラマを奏でてゆく──。

監督にも「もっと怒ってほしい」と言われて(笑)(深川)

──祖母の死をきっかけに、東京から地元・富山に戻り、お年寄りの遺影写真を撮ることになった結子の成長を描いた本作。深川さんは結子をどのような人物だと思って演じましたか?

深川麻衣(以下、深川) 結子は「こんなにも頑固なのか」と思うくらいに頑固。脚本を読んだときにも感じてはいたのですが、実際に撮影に入って、より一層思いました。監督にも「もっと怒ってほしい」と言われて(笑)。

香里奈 「そんな怒る!?」っていうくらいずっと怒ってたよね(笑)。撮影中、まいまいの笑顔をあまり見なかったもん。私とのシーンでも困っている顔や怒っている顔が多くて。

深川 はい。基本的に眉間にシワを寄せていました。写真を撮るシーンで、おじいちゃんやおばあちゃんのうれしそうな顔を見ていたら自分もうれしくなって無意識に笑ってしまうんですけど、ちょっとでも笑みがこぼれると監督から「笑わないで」と言われていました。でも結子がそこまで頑固なのにはちゃんと理由があるので、それは映画を観ていただければと。ただ頑固なだけじゃないということが、観ている人にちゃんと伝わればいいなと思いながら演じました。実際、私も人に「頑固なところあるよね」と言われることがあるので、自分が頑固になってしまったときの状況や気持ちを思い出して、重ね合わせることで、結子の頑固さが出せたんじゃないかなと思います。

──香里奈さんが演じる美咲は、そんな結子を近くで支える、お年寄りが住む団地のホームヘルパーです。

香里奈 明言はしていませんが、美咲は結婚もしていて、子供もいるという設定で。自分自身は母親の経験がないのですが、子供のいる友人などを見ていて思うお母さん像は、明るくてチャキチャキしている人。常に大きな気持ちでいて、人の話や悩みに対して、さりげなくアドバイスができる。美咲はそんな温かみのある人かなと想像して演じました。

深川 香里奈さんが演じる美咲さんは、結子としてもすごく頼りたくなる人でしたね。

──お二人は同じ事務所に所属する先輩・後輩でもありますが、初共演はいかがでしたか?

深川 香里奈さんの現場での佇まいや居方、すごく勉強になりました。取り繕うことなくフラットで、でも役柄のこともしっかり考えていて、なおかつ周りのこともすごく見ていて。ゆるめるところはゆるめて、締めるところは締める。そのメリハリがすごく素敵でした。切羽詰まっているときに香里奈さんと一緒にご飯に行ったんです。香里奈さん、聞き上手だから全てを受け止めてくださるんですよ。

香里奈 ふふふ(笑)。

深川 だから私も遠慮なく飛び込ませていただいて。話を聞いてもらっているうちに心がほぐれて「また明日もがんばるぞ」という気持ちになれました。

香里奈 現場で、まいまいの「もっとこうしたかったのに」という悩みや葛藤が垣間見えていて。そういうものを吐き出して少しでも楽になればいいなと思いながら、いろいろな話をしましたね。まいまいは役に対して真摯で真面目で丁寧。イメージ通りの素敵な女優さんでした。

深川 今作は事務所の設立25周年企画ということで、香里奈さんや高良(健吾)さんなど事務所の先輩とご一緒させてもらったのですが、こんな機会はめったにないと思うので、すごく幸せでした。

観終わったあとおばあちゃんに会いたくなりました(香里奈)

──完成した映画を観て、どのような作品になったと思いますか?

香里奈 全体的に温かい映画になったなと思います。年配の役者さんたちの持つ、重みや深みも映像に出ていて。私の祖母は亡くなっていますが、観終わったあとおばあちゃんに会いたくなりました。

深川 観る方の年齢によって違う感想を抱くと思うのですが、私と同世代、もしくはもっと若い方には「最近、おじいちゃん、おばあちゃんに会ってないから会ってみようかな」とか「連絡をしてみようかな」と思うきっかけになったらいいなと思います。あとは年齢問わず、遺影写真でなくても、この“おもいで写真”のように、好きな場所で写真を撮ってみようかなと思ってもらえたらうれしいですね。「自分だったらどこで撮るだろう」と考えたり、改めて好きなものや好きな場所などに思いを馳せるきっかけになれたらうれしいです。

──ちなみにお二人が今“おもいで写真”を撮るとしたら、どこでどのような写真を撮りますか?

深川 私は静岡の実家の、玄関を開けてすぐの風景です。出てすぐのところに田んぼが広がっているのですが、時期によってはすごく鮮やかで綺麗なんです。風が吹くとサーっと稲穂が揺れて。見慣れている風景ではあるのですが、いまだに写真を撮ってしまうほど好きな景色なので、それを背景に撮りたいですね。

香里奈 私はまだ思い出が足りません! もちろん瞬間瞬間での思い出はありますけど“おもいで写真”は大事な一枚じゃないですか。背景や状況で「この人はこういう人だった」というのがわかるもの。だから自分のイメージとマッチするような出来事や思い出を、おばあちゃんになるまでに作りたいなと思います。

(文・小林千絵)

◯Profile

深川麻衣(ふかがわまい)
1991年3月29日生まれ、静岡県出身。2011~2016年に乃木坂46のメンバーとして活動。卒業後は女優として活躍。今泉力哉監督の『パンとバスと2度目のハツコイ』(18)に主演し、TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。主な出演作は、連続テレビ小説「まんぷく」(19/NHK)、TVドラマ「日本ボロ宿紀行」(19/TX)、「まだ結婚できない男」(19/KTV・CX)、映画『愛がなんだ』(19)、『空母いぶき』(19)、『水曜日が消えた』(20)など。2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」に第十四代将軍・徳川家茂の正室・和宮役で出演。
香里奈(かりな)
1984年2月21日生まれ、愛知県出身。2000年から「Ray」(主婦の友社)の専属モデルを務め、現在は「GINGER」(幻冬舎)のレギュラーモデルを務める。2001年、TVドラマ「カバチタレ」(CX)にて女優デビュー。2004年に『深呼吸の必要』にて初主演&銀幕デビューし、日本映画批評家大賞新人賞(小森和子賞)を受賞。以降、モデル・女優として活動。主な出演作は、TVドラマ「私が恋愛できない理由」(11/CX)、「SUMMER NUDE」(13/CX)、「嫌われる勇気」(17/CX)、「恋はつづくよどこまでも」(20/TBS)、映画『しゃべれども しゃべれども』(07)、『パレード』(10)、『ラブコメ』(10)、『ガール』(12)など。 

『おもいで写眞』

全国公開中

出演:深川⿇⾐ ⾼良健吾 ⾹⾥奈 井浦新 古⾕⼀⾏ /吉⾏和⼦
監督・脚本: 熊澤尚人 脚本 :まなべゆきこ
音楽 :安川午朗 原作: 熊澤尚人「おもいで写眞」 (幻冬舎文庫 )
主題歌: 安田レイ「 amberamberamberamberamber」(ソニー・ ミュージックレーベルズ )
製作: テンカラット ソニー・ミュージックエンタテインメント イオンエンターテイメント 関西テレビ放送 スタジオブルー
配給: イオンエンターテイメント
©️「おもいで写眞」製作委員会