『WALKING MAN』野村周平×ANARCHY監督 インタビュー ※201902号掲載

インタビュー

日本を代表するカリスマラッパーANARCHYが初監督で手掛ける完全オリジナル作品『WALKING MAN』。本作は、ラップを媒介にした青年の成長物語が主軸となっており、自己責任論や貧困など社会問題にも鋭く切り込んでいる。主演の佐巻アトムを演じた野村周平さん、ANARCHY監督に本作の魅力ついてお聞きしました。

『WALKING MAN』あらすじ
川崎の工業地帯。幼い頃から人前で話すことも笑うことが苦手なアトム。極貧の母子家庭で、母と思春期の妹ウランと暮らしながら、不用品回収業のアルバイトで生計をたてる日々を送っていた。ある日、母が事故にあい重病を負ってしまう。家計の苦しさから保険料を滞納していた一家に向かって、ソーシャルワーカーの冷淡な声が響く。「自己責任って聞いたことあるでしょ?なんでもかんでも世の中のせいにしちゃダメだからね」。毎日のように心無い言葉を投げつけられるアトムだったが、偶然ラップと出会ったことでバカにされながらも夢へと向かっていく―。

–ラッパーである監督が映画を作る際に気をつけた、こだわったことを教えてください。

ANARCHY まず、舐められたくないというのがあって。ラップだけじゃなく、言葉選びやストーリーについても高橋ツトムさんと練りました。主人公のアトムが喋らない子なので、表情やシーンで感情を観客に伝える工夫が一番難しかったです。アトムがラップを歌うことで思いを伝えようとする感情と同時に逆に溜まっていく感情の部分……最後にしっかり答えが出る作品にしたいと意識していました。ラッパーが映画を作ると『8 Mile』(02)のようなラップが中心の映画を想像されるけど、今作はラップを通して青年の青春や成長を描いた物語なので。
野村周平(以下、野村) 脚本の上でもそうなんですが、映像を観た時に世界観にリアリティーがすごくある作品だと思って。アトムの成長の背景にANARCHY監督が見てきた世界が表現されているんだと思います。

–野村さんはアトムを演じる上でどんなことを意識されましたか。

野村 監督が見てきたリアリティ、ラップという世界にアトムが入り込んでいくような……。ラップをしている人がラップの成長をしていく物語ではなく、ラップに触れることで一人の人間が成長していく話なので、そこが面白いと思いましたし、アトムがHIPHOPに出会うときも含め驚きや発見、葛藤を意識しました。
ANARCHY 言葉を使うのが苦手でコミュニケーションがうまく取れない青年がラップと出会って「言葉」を使っていくことが今作で重要なことの一つでしたね。
野村 今作を観た俺の友達からも「最初、ラッパーがスーパースターになっていく映画なんかと思っていた。」と言われましたからね(笑)。
ANARCHY そういう固定観念抜きにして観て欲しいよね(笑)。

— ANARCHY監督にとって、音楽と映画はどのようなところで似ていて、違うと感じられますか。

ANARCHY 耳で聞いて想像させるだけじゃなくて目でも観るし、根本的な違いはありますよね。映画は表現が広くなっている気がします。音楽なら想像してもらうところを画として表現する必要がある。見えてしまうからこその大変さはあると感じました。

–自己責任というキーワードも作中で出てきますが、それを入れた意図を教えてください。

ANARCHY 何をするにしても自己責任って当たり前の事で。作中で「自己責任だよ」というところは、ある意味で違和感に感じるかもしれないとは思うんです。一番言いたかったのは、「ラップする事は自己責任」という言葉で。あの言葉がなかったら、この作品も違った気がするし。アトムは先天的なことで苦しんでいたけど、それを越えていく中で後天的なことは自己責任だよと。世の中に言われる自己責任にも違和感は感じるのでそこを表現したいというのはありましたね。
野村 最後の山本さんのセリフがアトムを浄化してくれているというか……。今の世代にはそれがテキトーになっている人も多い気がするんです。自分の選択による自己責任。それに対して覚悟を持って進むのか、アトムは進んでいった……。

–本作を観る方にメッセージをお願いします。

ANARCHY ラップムービーと構えずに、ピュアな気持ちで観て欲しいです。感じ方はそれぞれあると思うけど、観終わって何か感じるものがある作品になっています。
野村 ラップラップしてないです。好きなものに助けられている部分ってあるじゃないですか。そういうものの大切さってあるから。一つなにか大切なものがあれば助けられる事ってあるんで……。観た方がそういう気持ちを持ってくれたら嬉しいです。
ANARCHY それが見つからない人もいますもんね。見つけられたなら、それを大事にして一歩を踏み出してほしい。そういう見方もぜひしてほしい作品です。

(写真・金山寛毅 文・大山峯正)
◯PROFILE
ANARCHY
京都・向島団地出身。父子家庭で育ち、荒れた少年時代を経て逆境に打ち勝つ精神を培い、成功への渇望を実現するため、ラッパーとして活動することを決意。2005年のデビュー以降、異例のスピードで台頭し、京都のみならず日本を代表するラッパーの地位を確立。2014年にはメジャー・デビューを果たし、更にスケールアップした存在感でリスナーを魅了している。
野村周平
1993年11月14日生まれ、兵庫県出身。2010年に俳優デビューし、2012年NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」で注目を浴びる。近年の主な出演作に、『日々ロック』(14/入江悠監督)、『映画 ビリギャル』(15/土井裕泰監督)、『ライチ☆光クラブ』(16/内藤瑛亮監督)、『ちはやふる 上の句/下の句』(16/小泉徳宏監督)、『森山中教習所』(16/豊島圭介監督)、『ミュージアム』(16/大友啓史監督)、『サクラダリセット 前篇/後篇』(17/深川栄洋監督)、『帝一の國』(17/永井聡監督)、『22年目の告白‐私が殺人犯です‐』(17/入江悠監督)、『ちはやふる-結び-』(18/小泉徳宏監督)、『ラブ×ドック』(18/鈴木おさむ監督)、『純平、考え直せ』(18/森岡利行監督)、『ビブリア古書堂の事件手帖』(18/三島有紀子監督)などがある。 

『WALKING MAN』

全国公開中!

2019 映画『WALKING MAN 』製作委員会

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